さいたま市のA様邸に納めたパイプ収納キャビネットです。
Aさんはパイプの世界では知る人ぞ知る、というくらいのパイプコレクターの方で、つい最近もある男性誌に記事を書かれたそうですよ。
パイプに関する書物も昨年出版されていて僕にも一冊プレゼントしてくださいました。
「パイプ随筆」というタイトルの本で、著名な作家さんたちが過去に書かれたパイプに関するエッセイをAさんがまとめ上げた随筆集です。
パイプに関して全く無知な僕でも充分楽しめる内容の本でした。
この日の納品は置き家具なのでご主人の書斎の設置場所にポンと置いたらお終い。…だと思っていたのですが「できればパイプを収納するところまで一緒に手伝ってほしい。」と奥様からも頼まれてしまいました。ご主人はきちんと物を整理して片付けることが大の苦手なんだそうです。
ご主人の書斎はいろんな物が溢れかえっていて身動きできないくらいの狭さなので、大きなテーブルのあるダイニングルームに持って行って作業しました。ご主人が厳選したパイプを書斎から運んできてもらい、それらを僕らが見栄えの良いように並べる、という感じで作業を進めました。
こんなパイプがあとからあとから運ばれてきます。
個性的なパイプをご主人が一つ一つ解説してくださるので肝心の作業がなかなかはかどりません。ですが美しい美術工芸品を鑑賞しているみたいな気分で僕にはすごく楽しい時間でした。
この桐の抽斗箱は奥様が以前持っていた衣装箪笥の中に使われていた物で、箪笥本体は処分したけど中の桐箱だけは捨てずに取っておいたそうです。で、それを何とか有効活用できないかということで奥様がいろいろ考えてこのような形に再利用することになったんです。
一つの抽斗に26~30本のパイプが収納できて、その抽斗が5杯入っているので全部で130本くらいはここに収まる予定です。
これだけ入ればパイプで溢れかえっていたご主人の書斎も少しは片付くのではないか、と奥様は期待されていましたが残念ながら部屋の状況は全く変わらなかったようです。片付けても片付けてもあちこちの抽斗の奥の方からパイプが湧き出してくるみたいなんです。
素人目にも高価そうなパイプがこういう感じで無造作に箱に入れられているんですよ。
何個あるのか今まで数えた事すら無いらしいのですが、おそらく500本以上はあるみたいです。ってことはここに収まったのはたった5分の1程度でしかない、ということになりますね。
奥様の「部屋を片付ける」という目的のためにこの家具をオーダーいただいたんだけど、どうやら抜本的な解決にはならなかったみたい。
でも、ご主人はなんら気にされていませんでした。
今回このキャビネットに収納されたパイプ達は、ご主人が個人的に気にいって普段使われている物のようでした。ここからとっかえひっかえ取り出して使用されるそうです。でも、この家具の形状的に大地震が来たら抽斗が飛び出してバラバラとパイプが落ちてしまう可能性だってあると思います。なので最高級の貴重なパイプはここにしまうことはできないようです。そういうのは専用の収納ケースがあるらしいです。それほどの高級品は無理にここに並べる必要もないでしょう。
それから扉のつまみですが、パイプを直接貼り付けて引き手代わりにしたら面白いんじゃないか、という奥様の案で進めておりましたが、途中からご主人がデザインされたという日本パイプクラブのシンボルマーク入りのバッジを使ってつまみを作ってほしいということに方向転換されました。
渋くて格好良いつまみになったと思います。いろんな意味で疲れたけど楽しい納品でした。
主材:ナラ無垢材、桐ダンスに使われていた桐の抽斗
仕上:着色、クリアラッカー塗装
サイズ:470(w)×440(d)×1136(h)